2023年2月8日
はじめに
札幌の都心部、特に大通周辺では路上や公園などに多くの自転車が放置され、歩行環境の悪化や景観を損うなど、駐輪対策が喫緊の課題となっています。そこで、札幌市では路上放置自転車の解消を目的に、市道西2丁目線の地下に駐輪場(収容台数約1,300台)を新設することとなりました。本稿では、工事の特徴と施工について紹介します。
工事概要
- 施工場所
- 発 注 者
- 工 期
- 工事内容
東側出入口 L≒69m、W4.0×H4.3~4.5、
南側出入口 L≒67m、W3.8×H4.6~6.6、他、掘削条件等 親杭横矢板、掘削深 H≒15m、掘削土量 V≒23,000m3、
埋戻し土量 V≒ 7,900m3
工事の特徴と周辺状況

地下駐輪場完成断面イメージ
① 埋設物調査による仮設検討
道路台帳等を基に実際の埋設物の調査を行った結果、大幅に違う箇所も確認され、杭打ちラインと土留支保工の構造を埋設物に合わせて再考しました。また、施工時の埋設物を最小限とするため、杭ライン決定後、各埋設管理者と協議し移設可能な埋設物の移動を行い工事に着手しました。さらに埋設物の調査結果は3次元データによるCIMモデルを作成し仮設物や構造物の干渉、山留施工の問題点の抽出及び改善に活用しました。
点群データと3次元モデルの統合図
② 道路規制による施工方法の選定
市道西2丁目線はバス路線の3車線道路です。当初設計の杭打ち機械(アースオーガ)では、車線を通行止めにしなければ施工できない場所があるため、関係機関と協議を行い深夜0時から翌朝6時までを車道通行止めとしました。準備や片付けを除くと作業時間は4時間程度となるため、地質やビル近接など施工条件を考慮し、アースオーガに加えて2車線の規制で施工が可能な、多機能大口径削孔機とリーダレス杭打ち機を併用して杭打ちを行いました。また、親杭となるH鋼杭の規格を検討・改善し、杭の施工本数を低減させ合理化を図りました。
交通規制状況


③ 掘削時の埋設物対策
地下掘削では埋設物の吊防護が必要となります。一般的な管路は吊桁を配置しワイヤーで吊防護を行い、φ1500下水管や最大40tのマンホールなどの重量物は、安全性を向上させるため、専用吊桁と既存の親杭から受桁を配置し吊防護と受防護の2重の防護対策を実施しました。また、より堅固な固定にするため、ワイヤーからねじ切り棒鋼に変更し吊防護を行いました。
ビルと親杭が近接しているため、工事中の計測管理も重要となります。ビルへの影響が懸念される箇所は、多段式傾斜計や山留軸力計による計測を24時間リアルタイムで実施し、管理値を超えた際は職員へ通報するシステムにて監理しました。

大型マンホール等吊防護状況(吊受兼用)

構造物周辺人力掘削状況
④ 構造物の品質確保
構造物はコンクリートの3次元温度応力解析を行い、目標ひび割れ幅0.2㎜を上回るひび割れが予想されたため、誘発目地などを配置しひび割れ抑制に努めました。
解析モデル図
(全体の一部抽出)
最小ひび割れ指数分布図
3次元温度応力解析結果(全体の一部抽出)
構造物構築状況
おわりに
都市土木工事における3次元データの有効活用や、長期間にわたる仮設の計画や施工、吊・受防護の安全性の確認は今後の地下工事につながると考えます。
最後に、駐輪場完成により違法駐輪が解消されると共に、駐輪場利用者が集まり地域の賑わいが増すことを期待しています。


