地域に根差ざした特別養護老人ホーム~ノテ幸栄の里建替工事~

2024年2月29日


はじめに

 建設地は豊平区月寒東の国道36号線に面しており、地下鉄福住駅2番出入口南側に近接しています。「幸栄の里」は月寒西に現存する施設から移転を予定していますので、今回の工事名は建替としています。着工は令和4年9月1日から、令和6年2月29日までの18ヶ月で無事竣工引渡を迎えることができました。
 

工事概要

工事名称:特別養護老人ホームノテ幸栄の里建替工事
所 在 地 :札幌市豊平区月寒東1条13丁目28-23、28-29、31-3、31-16
発 注 者 :社会福祉法人ノテ福祉会 理事長 対馬 徳昭
設計監理:株式会社 西澤建築設計事務所
工  期:2022年9月1日~2024年2月29日

建物用途:特別養護老人ホーム(特養100床、ショートステイ20床、小規模多機能9床)
敷地面積:4,199.44m2(1270.3坪)
建築面積:1869.04m2(565.4坪)
延床面積:6,803.44m2(2058坪)
階  数:地上4階、軒高さ 12.45m、最高高さ 12.8m A・B棟 2棟接続
構  造:一般RC造、免震構造等
建物概要:A棟 
              1階 地域交流スペース、事務室、医務室、ファミリールーム、
             スヌーズレン療法室、相談室、厨房、食品庫、給湯室、
        汚物処理室、塵芥室
    2-4階 A・Bユニット(各ユニット居室10床、WC、スタッフカウンター、台所)
     〃  共用部分(脱衣室、浴室、機械浴室、EVホール、介護材料室)
               B棟
             1階 職員休憩室、ロッカー室、多目的室、機械室、防災倉庫, 倉庫、宿直室、
                       小規模多機能9部屋、浴室、汚物処理室、塵芥室
      2-4階 C・Dユニット(各ユニット居室10床、WC、スタッフカウンター、台所)
       〃   共用部分(脱衣室、浴室、機械浴室、EVホール)

建物概要・特徴的な部分


ポーチ

1階北側廊下
 外観写真でも分かるように敷地の奥行きが深く建物も細長い形状が特徴です。外観の配色はタイルと塗装の明るい配色と2階の板金庇部の黒い配色や1階に重厚感のあるタイルを配置するなどして、ノテ福祉会のグループイメージを出せるよう心掛けました。1階内部には地域交流を主要としたホールを設置し、事務室等共用施設を配置しています。
 北側の廊下は直線距離が60mほどあるので、施設担当者の方は今後の施設運用の面で色々な使い道が考えられるとお話しされておりました。
 2-4階は各階A-Dユニットで区分されて、各々10居室とスタッフカウンターや台所、居間等の居住空間を形成しています。更に仕上げのセレクトは、様々な柄や色彩及び異なる照明を採用して居住空間を作っています。
 壁や天井のクロス、折り上げ天井のクロス、床、シャンデリアetc視覚による刺激や入居者ご自身が居場所を認識できるよう考慮しています。

シャンデリア①

シャンデリア②


施工・安全管理での工夫

 施工を行う上では「時を守り」「場を清め」「礼を尽くす」の3つを念頭に、工程管理、場内の整備、近隣や工事関係者とのコミュニケーションを心掛けました。また、毎日の打合せも忘れずに継続したことが色々な面で効力を発揮したと考えます。
当たり前のことを当たり前に徹底するということで工事車両の交通及び第三者接触災害防止に向け、ラッシュ時の搬入出規制や右折禁止ルールの徹底と周知を表示等で行いました。ゲート前には一時駐車場所を設けることで朝夕のゲート開閉時に車道への駐車を禁止するように配慮しました。
 先行B棟躯体工事での冬季作業(上屋・楊重・除雪etc)は大型クローラークレーンを配置することで作業の効率化が図られました。


ゲート前

冬期全景

 仕上げの検討では、高齢者が使用する施設なのでカウンターやサインの高さ、日常生活での危険な場所を作らないようにすること、床のちょっとした段差に注意するよう配慮しました。毎日使用する手摺やトイレは仮設でモックアップを作り施主や設計に実際の形状、高さ、使い勝手を確認して仕上げていきました。


WCモックアップ確認風景

WC完成
 
特に敢闘した工程 


工事中はとにかく場内通路が狭く、搬入出車両の業者配分や時間配分を2週間先までの予定を組立て、搬入出に関わる工程を厳守して進めたことです。また、天気が悪くても、朝が早くても、不具合が発生しても情報共有とスピード感のある関係者の対応がよかったです。
 南側には敷地境界まで約2m前後ほどで隣地駐車場が全面に接しており、場内の粉塵や飛散物などがないように注意しました。具体的には資機材の整理を充実させ、仮設道路の敷鉄板整備や外部足場のシートはメッシュ系ではなく飛散の影響が少ないものを採用しました。仮設の計画時から外部の仕上げや屋上作業の天候に左右される影響を想定して実施し、問題なく完成させることができました。何事も事前準備が大切だということを念頭に進めました。


隣接した駐車場での作業

北側の狭い通路

DXへの取り組み

 WEBカメラを使用してゲートの出入りを観察し、資機材の状況や施工の管理等、現場の状況確認を適宜行えたことが安全管理に繋がったと思います。また、iPadやiPhoneを利用することで現場から離れていても確認ができたので安心でした。
 スパイダープラスをツールとし工事写真や検査関係をまとめましたが、やはり整理を段階的にすることが大切であると竣工時期に職員は痛感したと思います。便利な物でも継続作業が大切だと改めて思いました。
 LINEやカレンダー管理のアプリを使用しての文字以外の写真や図面での情報共有はよいと思いますが、一方的に配信だけにならないように注意が必要と感じました。

働き方改革への取り組み

 着工から4週6閉所を続けてきたが、終盤の冬季作業になる前に土曜日も作業を行う状況となり土曜閉所は難しかったですが、職員は交代で6休することができました。
 ただし、段階的な現場確認や書類整理など分担作業が可能なことへの取り組みが必須であ  
 ると感じております。
 

最後に

 コロナ禍から始まった工事で、竣工までの18ヶ月を無事故無災害で終了できたのもひとえに関係者の皆様方のご尽力とご協力があったからこそ達成できたものと思っております。全工程も大きな遅延が無く進められたのは、一つ一つの積み重ねでできたものと感謝しています。若手社員には「竣工」という達成感を体験させて、完成することの喜びを伝えられたことがよかったと思います。