2020年2月20日
はじめに
世界的に海洋天然資源の減少が進むなか、モロッコ政府は養殖業の推進に取り組んできました。養殖業に使用する貝類の人工種苗は生産技術が未開発で輸入に頼っていましたが、ウイルスのリスクや安定供給面で問題があり、モロッコ国内での貝類養殖技術の向上が急務となりました。
このプロジェクトは日本国のODA(政府開発援助)案件として、貝類養殖技術向上のための試験研究活動を本格化し、水産養殖事業の持続的成長に寄与することを目的としています。モロッコの一人当たりのGDPは3,000 ドル超のため、日本の一般無償援助の対象国からは外れており、この案件は水産特別無償資金により実施しました。 |
モロッコという国?
正式名称は「モロッコ王国」といい、北アフリカ北西部に位置する立憲君主制国家です。人口の99% がイスラム教徒で、アラビア語とベルベル語が公用語となっていますが、かつてはフランスの保護領であったことから、フランス語も全世代に通用する準公用語となっています。 |
工事概要
発注者 モロッコ王国農業海洋漁業省海洋漁業総局
工期 平成29年3月4日~平成30年7月15日
概要 管理棟・飼育棟ほか RC造、地上1階建て
高架水槽塔 RC造、地下1階/地上4階(総延床面積:2,121m2 )
海洋土木工事:海水取水管敷設(海底埋設)φ150 - 400m x 2列
取水濾過槽(海底埋設)□- 3.0m x h1.65m x 2基
機材供与:研究飼育機材一式
コンクリート打設
管路掘削(海洋部)
朝 礼
飼育研究棟 |
管理棟 |
高架水槽棟 |
生物飼料培養室 |
モロッコはイメージと違う?
◆イスラム教の国?
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プロジェクトの特異性
ODA(政府開発援助)案件では、近隣住民や現地の役所からの歓迎・協力を得るものですが、このプロジェクトでは皆無でした。妨害こそありませんでしたが、様々な規制や下記の問題点により、工程的な苦労や地域住民への直接メリットのない案件としての難しさを経験しました。
① 観光地として、夏場の海水浴場、施設の景観を損なう ② 観光収入に依存する地域住民が海水浴客の減少を危惧 ③ 完成した施設には地元からの雇用を期待できず、 プロジェクトによる地域のメリットが少ない |
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おわりに
このプロジェクトは平成30年7月15日に無事竣工致しました。本案件に関わり、ご協力頂いた全ての関係者の方々に深く感謝申し上げます。
過去のODA案件である学校、病院や橋梁などと異なり、研究所(養殖施設)の建設としての特異性から、歓迎・協力を得られず苦労しました。特異な環境のなか現地の協力会社、現地スタッフや職員の努力により、海岸の景観を損なうことなく素晴らしい施設が完成できたと自負しています。
この施設が有効に運営されることで、地域住民はもとよりモロッコ国全体の水産業の持続的成長に貢献できることを祈念します。(工藤利美)
工事着手前 |
管理棟 基礎掘削 (平成29年6月) |
現場全景 |
飼育研究棟 基礎 (平成29年7月) |
飼育研究棟 (平成29年8月) |
飼育研究棟 手前が高架水槽棟 (平成29年11月) |
高架水槽棟 (平成29年9月) |
高架水槽棟 (平成29年12月) |
高架水槽棟から撮影 (平成30年2月) |
擁壁 奥が管理棟 (平成30年1月) |
管理棟 (平成30年3月) |
手前から飼育研究棟 管理棟 高架水槽棟 (平成30年3月) |
完成 飼育研究棟内部