2016年9月8日
山形県鶴岡市とは
山形県は、東北地方の南西部に位置し、村山地方・最上地方・置賜(おきたま)地方・庄内地方の4地域があります。村山地方は内陸で県庁所在地の山形市や上山市・天童市・寒河江市などがある山形一栄えている場所で蕎麦やさくらんぼ、蔵王などが有名な所です。最上地方は村山地方の北方に位置し、銀山温泉や肘折温泉などの温泉が全国的に有名です。置賜地方は、米沢市・南陽市などがある県南に位置し、何と言っても米沢牛が有名です。さて我が庄内地方は言いますと、庄内平野や出羽三山・鳥海山が有名であり、庄内米ブランド『つや姫』、果物が有名で、山形で唯一日本海に面していることから魚介類も有名な場所です。また庄内美人と言われるだけあり、美人の方が多い地域です。
笹根トンネルは、庄内地方鶴岡市南方の旧朝日村に位置し、周囲は出羽三山や朝日連峰などの山々で囲まれており、朝日連峰内にある大鳥池は、人気漫画『釣りきち三平』で題材になった幻の巨大魚“タキタロウ”がいると言われている自然豊かな場所です。ニホンザルやツキノワグマ・タヌキ・カモシカ・クマタカなど野生動物も多く生息しています。ツキノクマやカモシカは見たことがありませんが、時折現場周辺にはニホンザルが集団で現れます。また晴れた夏の夜には、現場事務所周辺の田んぼではゲンジボタルを見ることができる場所です。
アウェイの洗礼
山形はつい数年前まで日本の最高気温を記録したほど夏は非常に暑く、冬は雪の多い場所です。平成26年4月鶴岡に乗り込んだ時の印象は「雪が多いと聞いていたが北海道の豪雪地帯よりは少ないな」と。これが後に大きな間違いであった事など当時は知る由もありませんでした。たまたま前年は積雪量が少なく春が早かったのです。
案の定、平成26年12月に入ると毎日雪が降り続き、翌年1月までの2ヶ月間で青空を見た日は1日もありませんでした。朝起きると外は真っ白・日中は深々と雪が降り積もり・夜は吹雪、これの繰り返しです。現場職員や作業員の心も折れそうなほどでしたがそれもそうです、ここは月山の裾野なのです。積雪量は平均10mを優に超える山形でも有数の豪雪地帯だったのです。
最適なトンネル掘削補助工の選定
トンネル掘削開始側のトンネル坑口地形は、旧地すべり地帯の滑落崖とその下方に形成された崖錐で、地山は非常にルーズな崖錐堆積物でした。トンネル坑口から50m程は多亀裂の風化安山岩や軟質な自破砕安山岩と凝灰岩互層で、切羽の自立が非常に困難でした。また坑口80mから100m付近までは断層破砕帯が分布していました。トンネル坑口からの100mまでがこのトンネルのポイントであり、効果的な掘削補助工を選定する事が不可欠でした。当初トンネル掘削補助工法は詳細設計業務内で仕様が決定されていましたが実際にトンネル掘削がスタートすると天端や両肩・切羽などから大小の崩落が相次ぎ、明らかにトンネル掘削補助工法の効果が小さいことが分かりました。そのため詳細設計業務報告や水平調査ボーリングなどの地質調査報告、切羽観察などの地山状況、内空変位などの地山挙動を総合して、その都度計画・検討・協議を行いトンネル掘削補助工法の仕様を決定していきました。
また、崖錐堆積物が予想以上に堆積していて、トンネル掘削を一時中断し周辺地山を改良するといった対策も余儀なく行いました。改良しても注入圧力は全く上がらず、注入量ばかりが増大し、それと同様に我々も最も悩み、胃が痛かった時期でもあります。
トンネル掘削補助工による改良効果が確認され始めた3シフト目以降は、地山状況も掴むことができて、次シフトである4シフト目、最終シフトである5シフト目の仕様に関しては、ほぼ予想通りの地山状況であり、特に5シフト目は地山の悪い箇所をピンポイントで狙うことが出来て効果大でした。
その後の断層破砕帯では、リングカットや切羽鏡吹付、マイクロベンチの採用等により切羽崩落することなく、また内空変位は最小限抑制して施工することができました。
こうして平成26年9月16日からトンネル掘削を開始して、崖錐堆積物・自破砕安山岩や凝灰岩互層・断層破砕帯を無事に切り抜けることができ、胃の痛みも解消されつつありました。
実りの秋、充実の秋
トンネル掘削が順調に進み始めた11月になると、皆が東北山形を満喫するようになりました。趣味も多種多様で、美味しいものを食べに行く者、山形県内の観光スポットを回る者、ちょっと遠出をして県外へ遊びに行く者、釣りに行く者、飲みに行く者など。しかし何といっても山形と言ったら日本酒です。有名酒造会社が多く、どんな日本酒を呑んでもハズレがなくレベルが非常に高いのです。出羽桜、初孫、大山、くどき上手、上喜元、十四代などなど。これにはびっくりしました。ぜひ皆さんも山形の酒を呑む機会がありましたら是非どうぞ。トンネル坑内湧水と貫通まで10m
トンネル掘削が順調に進み、トンネル深度100mを過ぎた辺りから坑内湧水量が増え始め、トンネル深度350mでは濁水処理設備で最大処理量70m3/h以上の処理を行いました。雪解けによる出水期と沢地形の直下を掘削していたことから湧水量が増大したと思いますが、坑内のあちらこちらから湧水が吹き出し、水には逆らえないと改めて感じました。平成27年6月になるといよいよトンネル貫通が間近に迫ってきました。本貫通では「トンネルの貫通を見てみたい」との要望があり、発注者である国土交通省や共同事業者である山形県に呼びかけ、平成27年6月26日に本貫通しました。本貫通からトンネルはまだ10mほどの施工を残していました。この10mのトンネル施工が非常に大変でした。切羽は中硬岩で非常に硬いためギリギリまで発破掘削を行いましたが、トンネル直上には表土が堆積しているため発破による影響の有無を確認しながら掘削を行いました。また、トンネル横には現道路が接していることから第三者災害にも細心の注意を払わないといけません。この10mの施工に約半月を要して、平成27年7月10日無事にトンネル掘削は完了しました。
貫通式
トンネル掘削開始から幾多の問題や難関を経て、約16ヶ月の歳月を要して、平成27年7月30日に貫通式を迎えることができました。貫通式には国土交通省・山形県庄内総合支庁・鶴岡市・庄内労働基準監督署を始め、地元関係者や住民の皆様の約100名にお集まり頂きました。貫通式は厳粛な中、貫通の儀・貫通報告・貫通点清めの儀を行い、樽神輿入場では拍手と笑いも起こり大いに盛り上がりしました。発注者挨拶・来賓祝辞・祝杯・鏡割りと続き、美酒を頂きました。記念撮影では初の参加者全員による記念撮影を行い会場は一体感に包まれました。締めは山本副社長による施工者挨拶と横須賀支店長による万歳三唱で締めくくり、参加した皆様に大変喜んで頂きました。
笹根トンネルは、まだインバートコンクリート40m、覆工コンクリート520m、坑内コンクリート舗装工、明かり大型ブロック積み工、排水構造物工などと多工種の施工がこれからです。残工事も引き続き、現場職員や作業員、発注者・関係機関と一致団結して、『切羽崩落災害の撲滅・環境配慮と第三者災害の防止・地元に密着したモノづくりの徹底』の現場方針のもと、工事を進めていきたいと思います。(平成28年6月無事竣工しました。)